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ドンジョヴァンニ


ご無沙汰しております。月1更新しましょうそうしましょう。

5月1日 オペラ「ドンジョヴァンニ」無事終演いたしました。ご来場くださいました方々に心からのお礼と、関わったすべての皆様、本当にありがとうございました。

私は大学院オペラを体験し、オペラを一本通すと言う非常に大きな機会は自分にとってもっともっと遠いところに在ると感じていました。本当に幸せなことに声をかけていただいて、私はまた一本オペラに乗れました。関わるスタッフは100位なのですが、今回の公演や先月の「ラ・ボエーム」を含め、たくさんの方々と出会い、たくさんの努力と、すばらしい舞台を作っていく稽古場。たくさんのお客さんに囲まれ、たくさんの刺激を受ける機会をいただき。こんなに幸せでいいのでしょうか。っと勝手に思っております。

ドンジョヴァンニあれこれ

ドンジョヴァンニ。約2000人ほどの女性と関係を持った伝説の女たらし。一日一人でも6年弱かかるのですが、一体どうなっているんでしょうかこの人は(笑) おそらく歴史上最強の女たらし・・・と思っていたのですが、先日12000人とうにゃむにゃって方がいたので、もしかしたらそう多くはないのかもしれません。あ、でもジョヴァンニ君はお金の力ではなく悪魔的な魅力で関係を持っていたのでやはり最強の女たらしでしょう。いずれにしろ感覚が狂いそうな桁です。そんな自由奔放な彼の最期が書かれているのがW.A.モーツァルト先生の作曲した「ドンジョヴァンニ」です。オペラの魅力について語るとこの記事の更新が何年か先になりそうなので今回は私の演じた「マゼット」って役について少しだけ書いていこうとお思います。

オペラの登場人物ってのはその役名に既に意味が込められているものが多かったりします。それはオペラの元になったコメディア デラルテなる物だったりオペラ史上でそういった流れがあるのです。名は体を表すといわんばかりに。

マゼットはイタリア語だとMasettoになります。

Masoって言うのはイタリア北部に見られる農業地形の一つで、小作人用住宅つきの農地のことを指します。

ettoまたはettaってのはイタリア語だと ~ちゃん と訳したりするのですが親愛や時にして侮蔑、または縮小した小さいものにつけたりします。

 つまりMasetto君は日本名にすると農地ちゃんです。なんとすごい名前だ。私がこんな名前になっていたら絶対に都心に出てピックになってやるって言う野望を持ってしまいそうな名前です。持っている畑が小さいのか、または畑に愛情を注ぎまくっているのか。私は後者だと思っています。

 大体のオペラには原作があります。そこから人物像のヒントを得られるのですが、ほぼ大体の作品でその役がどんな人生を歩んできたかまでは書いてありません。書かれていない所は想像するしかないのです。

 私がこのマゼット君を研究するに当たって真っ先に疑問に思ったことがあります。それはなんでこの二人、マゼットとその婚約者ヅェルリーナのカップルは結婚したのだろうかってことです。勉強しつつ読み進めていくと、ヅェルリーナちゃんは誘惑上手でコケティッシュで、かつしたたかな女性です。よく上演時にカットをする部分ではレポレッロに対し、縛りつけぼっこボコにしつつ「今から毛をそってあげる。石鹸なしでね。」とか言います。愛ゆえでしょうが、なんと恐ろしい。そんな彼女と、むちゃくちゃ嫉妬深いマゼット君がなんとなんと結婚することになしました。お互いの性格的にしっくり来ないと言うか、デコボココンビ(今回は見た目を含める)がくっつく訳を考えます・・・うーん。まさか縁談で無理矢理?いやいや、彼らの登場の音楽や台詞からは到底そんな無理矢理なんてことは考えられません。愛し合って結婚したのです。どんな過去があったのでしょう。楽しくなってまいりました。

 マゼット君は天然で、かつすぐ人を信用してしまいます。なにやら踊らされている間に婚約者は連れて行かれ、自分の敵ドンジョヴァンニの部下レポレッロが一緒に主人を倒そうって話をすぐに信じ(この時のレポレッロは変装したドンジョヴァンニなのですが)、持っている武器を手渡してしまったりと。私はこいつは本当にいいやつで、何処までも素直で、天然なんだなーと思いました。きっと村の中での彼の人柄がらのよさが、彼の最大の魅力なのだと思います。面倒ごとでも楽しいことでも自分の損得をきにせず何でも引きうけ、自分を中心に村の男を連れて、ドンジョヴァンニを一緒に探すところから頼りになるやつでもあるのです。

 しかしながらこと恋愛に関しては持ち前の天然でいろいろ残念なことになっていたのではないでしょうか。彼女が小悪魔っぷりが天才的であったとしても、ついさっきまで彼女に怒っていたことを許したり、すぐでれでれしてしまいます。大好きで止まない人には何処までも役に立ちたいのですが、ヅェルリーナ一筋ゆえに嫉妬深い。嫉妬深い人は基本的に不器用・・・な気がします(笑)恋愛的に空気を読めないので空回りするのです。そうですね・・・現代で置き換えるなら

ヅェルリーナ「DVD見られなくなっちゃったから直しにきてほしいなー。(マゼット家に呼んじゃった!嬉)」

マゼット「任せろ!(よっしゃーやくにたてるぜー!!嬉)」

マゼット「よし!これで直ったぞー!」

ヅェルリーナ「ありがとう!えーっと・・・」

マゼット「お疲れ!じゃあ俺帰るわ!」

ヅェルリーナ「」

 え?帰るの?突っ込みどころ満載ですが、要するにアホなのです。でも分かりやすいほど彼に悪気がないので愛されキャラになるのです。ヅェルリーナは彼の気を引くの大変だったと思います(笑)

 こういう分かりやすい人ほど隠し事が下手だなので(こういった考察はあくまで私の経験則です)、彼がずっとヅェルリーナに夢中なのは村の誰もが知っていたことでしょう。二人の重唱の呼吸の合い方を察するにおそらく幼馴染かと。ここ何年かで出来る息の合い方じゃない気がします。非常に長い彼の片思いはようやく実を結び、結婚を迎えるのです。

 そんな温和な彼が唯一怒るシーンがあります。ヅェルリーナをドンジョヴァンニに誘惑されるシーンです。マゼット唯一のアリアにもなっているこのシーンで、彼は初めて本気で怒るのです。自分の婚約者に。

幸せいっぱいの結婚式に現れたのはドンジョヴァンニとその従者レポレッロ。ドンジョヴァンニはいつもと同じようにお目当ての女性を探し、ヅェルリーナにターゲットを絞ります。二人きりになりたいドンジョヴァンニはレポレッロに農民のみんなを屋敷に招待し、そこで合成に彼らを祝おうと提案。農民たちは普段味わうことの出来ない貴族の招待に大喜びするのですがマゼットは嫉妬深さ故にすぐ察してしまいます。お互いに引き下がらないドンジョヴァンニとマゼットの間にヅェルリーナは「先に行ってて。心配しなくていいの。騎士様と一所に行くわ。」といいます。彼女は選択したのです。騎士と一所に行くことを。この後の2重唱の前の台詞で、ヅェルリーナは「最終的には騎士様みたいな人たちって皆裏切るのよ。」といいます。つまり彼女は純粋で何も知らなかったわけではなく、どうなるかある程度分かっていた上でドンジョヴァンニと残ることにしたのです。彼女の中で、騎士に対する興味はそれほど大きかったのでしょうし、マゼットもまさかあんなに怒るものだとは思っていなかったのだと思います。

結局、二人きりになるのですが、事が危なくなる前にドンジョヴァンニの元妻、ドンナエルヴィーラが現れ、ヅェルリーナは彼女に無理矢理連れて行かれてくのですが・・・

マゼットは去り際に今までいったことがない罵声を彼女に浴びせます。彼は彼女のためなら何でもする決心をしていました。彼女もきっとそうであると信じていたのです。決して権力や腕力に屈指てあの場を去ったのでわないのです。結婚をし誓い合った自分ではなく、騎士を選択した彼女に初めて「いかり」をもって怒り、去るのです。

結婚式当日にそんなこと言われたらどうなるのでしょうね。私?何も言えなくなるでしょう。多分(笑)

 ドンジョヴァンニにおけるマゼットの立場はどうしても影が薄くなりがちです。出番の少なさもあるのですが、正直私がこの役に取り組むまで全然美味しい役に思えないほど、ドンジョヴァンニはかっこいいのです。演出によってはマゼット君は何処までもさえなく、心の狭さが目立ってりとなんだか可哀そうな役になったりします。このオペラ中の彼の行いの数々は正直残念でなりません。そんな彼をヅェルリーナは許し、ぼこぼこにされた彼の薬になってあげるというのです。彼女がそうなってもいいと思えるほど彼が愛おしい理由は、母性をくすぐる可愛いいやつだからこそではないしょうか。ドンジョヴァンニの死後、彼らは幸せな新婚生活を送るのです。そんな彼を見ていただいた方々に少しでも彼のすばらしい所を伝えられていたら幸いです。

話の内容がガラッと変わるのですが、5月4日は私の誕生日になります。たくさんの方々からメッセージをいただき、勇気をもらえて本当に嬉しいです。これからも精進いたします。また一ヵ月後に!

宮城島


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